「喉声って、何年で治るんですか?」
これ、自分の声を初めて録音して聞いた瞬間、絶対に検索したくなるやつ。
でも、誰も具体的な数字で答えてくれない。
だから今日、僕が書く。
養成所に 5 年通った。そのうちの 2.5 年を、僕は「喉声枯らしマン」として生きていた。
理由はひとつ。順番を間違えていたから。
これを読んでるあなたが、自分の声を録音して気持ち悪くなった人でも、YouTube のボイトレ動画を 100 本見ても治らない人でも、たぶん知りたかった話のはず。
喉声枯らしマンを卒業した「確信的 3 ステップ」 — だけど僕は「3」から入って 2.5 年溶かした
先に結論をぶつける。
僕と同じ症状で悩んでる人なら、たぶん、この順番で治る。
- ため息の感覚を体に入れる
- そのため息に "裏声" を乗せる
- 鼻腔共鳴を練習する
順番は、1 → 2 → 3 で。
僕がやってたのは、いきなり 3 から入ることだった。
「鼻腔共鳴がいいらしい」って聞いて、土台がゼロのまま鼻にだけ響かせる練習をした。自分が間違った道を進んでいることに気づかないまま、2.5 年溶かした。
念のため言っておく。鼻腔共鳴自体は正しい。声優の基礎中の基礎。
問題は 「いつやるか」。これだけ。
人によって声帯の状態は違うから「絶対に治る正しい順番」とは言えない。でも、僕にとっては、これが 確信的な答えだった。
数字で見る、僕の喉声時代
養成所通った 5 年間で、僕がどれくらい喉声に時間を溶かしたか、数字で書く。
「2.5 年も?」って思ったあなた、正常な反応。僕も卒業してから振り返って、ゾッとした。
5 年の養成所通って、半分の 2.5 年を「順番を間違えた基礎練習」に溶かしてた、ってこと。
僕がもし 19 歳のあの春に戻れるなら、自分にこう言う。
「最初の 1 年は技術なんて気にするな。とにかく順番を守れ。」
喉声時代の僕がやってた「間違った順番」
19 歳で養成所に入って、最初の半年で気づいた。
「自分の声、気持ち悪い」
カラオケ通いの癖で、地声を喉で締めて出す 典型的な喉声だった。録音して再生したときの違和感、声優志望なら誰でも一度は通る通過儀礼だと思う。
ここから、僕の「治そう」フェーズが始まった。
最初に飛びついたのは、「鼻腔共鳴」っていうキーワードだった。
YouTube のボイトレ動画にも、養成所の講師の口からも、先輩の練習風景でも、何度も出てくる。「これがプロの声の正体だ」って言ってる。
だから、僕はやった。
鏡を見ながら、鼻の奥に声を当てるイメージで、「なー」や「のーのーのー」を毎日繰り返した。
最初は、手応えしかなかった。
「おお、これが俗に言うアニメ声か。」
鼻に響かせると、確かに、それっぽい声が出る。「これは使えるじゃないか」って思った。
「これで演技してみよう。これで通常の喋り方にしてみよう。」
そう信じて、普段の会話まで鼻に抜けるトーンに変えていった。
異変に気づかせてくれたのは、友達だった。
「お前、なんか喋り方変わった?」
「ちょっと鼻声っぽいっていうか、鼻詰まってね?」
──え?
慌てて録音して聞き返した。
確かに、鼻にかかった「それっぽい声」にはなってる。でも、なんだか こもってる。芯がない。台本を読んでみると、前回同様、5 分も持たずに喉が締まってくる。
そこでようやく、気づいた。
「これ、アニメ声じゃない。ただの鼻声だ。」
しかも、普段の話し声まで巻き込んで悪化させてた。
養成所に払った学費でいうと、約 55 万円分を、この「気づかない 2.5 年」に投下したことになる。
転機は「歌のボイトレ動画」だった — 3 年目の研究フェーズ
転機は、3 年目に入ってからだった。
実は、1-2 年目もちょくちょく YouTube のボイトレ動画は見てた。気が向いたとき、寝る前、移動中、軽く。
でも、3 年目に入ってから、見方が変わった。
体感だけじゃなく、理論まで気にし始めた。
声帯の動き、横隔膜の使い方、共鳴腔の位置、裏声と地声の境界、ミックスボイスの構造 — 一個一個、調べた。
「研究した」って言っていいくらい、ボイトレ動画を見漁った。
そうやって理論を浴び続けて、ようやく気づいたことがある。
「歌の発声」と「芝居の発声」は別物だって、よく言われる。僕もそう信じてた。
でも、動画を浴び続けて、自分の体で試して、5 年通った結論はこれ。
歌と芝居の "応用" は別物。でも、土台の発声は完全に同じ。
芝居の台本を 5 分読んで喉が詰まる人が、歌になった瞬間に治るなんてことは、絶対に起きない。共通の土台があるから、歌のボイトレ理論で土台から直せる。
僕は芝居の練習だけで喉声を治そうとして、2.5 年溶かした。
3 年目、歌のボイトレ動画から拾った理論で 3 ステップを順番通りにやり直した。
ここから、ようやく治り始めた。
確信的 3 ステップ — 思いもよらない方法で、僕は治した
繰り返すけど、人によって声帯の状態は違う。だから「絶対に治る正しい順番」とは言わない。
でも、僕にとっては、これが 確信的な答えだった。
順番は 1 → 2 → 3 で。
ステップ 1:ため息の感覚を体に入れる
最初にやることは、「うまく発声する」じゃない。
お腹を使って、ため息を吐く感覚を体感すること。これだけ。
待って。
「これからアニメ声とか、芯のある声で歌えるようになりたいのに、最初にため息かよ。」
──分かる。僕も最初にこれ知ったとき「は?」ってなった。
声優志望が最初にやるのは、滑舌か、発声か、台本読みじゃないの?って思うよね。
でも、これがマジで土台。ここを飛ばすと、僕みたいに 2.5 年溶かす。
椅子に座って、肩の力を抜いて、口を軽く開けて、お腹から空気をふーっと吐き出す。声を出そうとしない。
これが、いわゆる「腹式呼吸」の入口。
「腹式って分からない」って人は、ここで詰まる。声を出そうとするから分からなくなる。まず "ため息" だけを、丁寧にやる。
ステップ 2:そのため息に "裏声" を乗せる
ため息の感覚が体に入ったら、次は 裏声を乗せる。
これ、ポイントが 1 つだけある。
地声を乗せようとすると、ため息がプツッと途切れる。裏声でしか乗らない。
これに気づいたとき、僕の中で全部つながった。
地声で出そうとすると、人間は無意識に喉を締める。締めた瞬間、ため息は止まる。だから「ため息+発声」は、脱力した裏声でしか成立しない。
裏声を乗せたまま、ため息を 5 秒、10 秒、15 秒と伸ばしていく。
「お腹も使えてる、しかもクリアに発声できてる」という体感が手に入る。
ここが、喉声から脱却する瞬間。
ステップ 3:鼻腔共鳴を練習する
ここまで来て、初めて鼻腔共鳴の練習が意味を持つ。
ステップ 1-2 の土台がない状態で鼻腔共鳴をやると、僕がやってた「変な鼻声」になる。
土台ができた状態で鼻に響かせると、プロ版のアニメ声が手に入る。
順番が逆だと、2.5 年溶かす。順番通りだと、半年で別人になる。
エイト(24 歳・現役声優)の結論を、もう一度書く。
「一番大事なのは知識。苦悩する経験も必要だけど、知らないとできない」
「次に大事なのは順番」
「治った」と気づいた朝練 — ヒゲダンが 97 点で歌えた日
3 年目の冬、1 月か 2 月だったと思う。オーディションシーズンの真ん中だった。
その日も、いつも通り朝からカラオケに入って、発声練習を始めた。
僕のルーティンは決まってる。最初に好きな曲を 2 曲歌って、体を起こしてから本練習に入る。
1 曲目に選んだのは、ヒゲダン(Official 髭男 dism)だった。
僕、ヒゲダンが大好きなんだけど、普段はほぼ歌えない。原曲キーが高すぎて、調子悪い日は 1 オクターブ下げないと出ない。
その日、歌った瞬間に思った。
「今日、めちゃくちゃ楽だ」
結果、その日は 100% フルキーで歌い切れた。
サビの高音、全部当たった。喉に違和感がない。むしろ、出すべき場所から声が出てる感覚があった。
カラオケのモニターに、97 点が出た。
そのとき、確信した。
「今日、できるな」
何ができるか、まだ分かってなかった。でも、何かが体の中で噛み合った感覚があった。
ヒゲダンの後、僕がやろうとしてたのは、ある朗読劇の台本だった。
リーディングハイっていう、一流声優陣が集まる朗読公演があって、それを見に行ったときに台本を購入してた。
全編+後編で、約 2 時間。
プロの声優は、これを 1 日 2 公演(午前・午後)でこなす。同じ素材を、1 日に 2 回、本気で。
それを観たとき、僕はこう思った。
「化け物だな」
当時の僕は、全編 1 時間すら、喉が持たなかった。30 分過ぎたあたりから声が掠れて、最後は読んでるのか唸ってるのか分からない状態になる。
買った台本は、ずっと机の上に置いてあった。読み切れないことを、自分で認めるのが嫌だった。
3 ステップを並行して進めて、半年経った冬の朝。
カラオケでヒゲダンが 100% で出た直後、僕はその台本を引っ張り出した。
「今日、もう一度やってみよう」
スタジオを取って、台本を開いて、全編を読み始めた。
30 分、過ぎた。喉、苦しくない。
1 時間、過ぎた。初めて、1 時間の壁を越えた。
そのまま、後編に突入した。